翻訳品質の追及に終わりがないからこそ、当社は最高品質を目指します。当社では、新たなツールやソフトウェアの研究・検証、より効率的な制作フローの構築、社内の適正な⼈員配置、有能な翻訳者およびチェッカーの開拓、社員教育や情報共有など、品質管理に対して様々な取り組みを⾏っております。
ここでは、標準的な翻訳案件の工程で当社がどのようなことを行っているか、また、品質の恒常的な維持向上のために日々どのような施策を講じているかをご紹介いたします。
当社は最新のドキュメント管理方法・データ形式に対応しており、お見積り・受注時にドキュメント内容を詳しく確認し、案件に合わせた作業工程の設計図を作ります。ドキュメント解析は、今や翻訳業務を行う上で最重要の工程と言っても過言ではありません。翻訳対象箇所の特定、翻訳不要の箇所を翻訳しないための機械的な処理、繰り返しの多いテキストの一括処理、非表示ページ・隠しテキストの検出、Adobe系アプリケーション(FrameMaker、InDesign、Illustrator)でのEPSファイル内テキストの抽出やマスタ・リファレンス情報の確認、XMLファイルのタグ情報の処理など、翻訳作業前に適切な解析および処理を行うことで、翻訳作業を中心としたすべてのプロジェクトフローが最適化され、品質を確保しつつ全体のスピードアップとコストダウンを実現します。
ドキュメントを解析し、プロジェクトの作業フローを構築後に、必要に応じてデータ処理を行います。翻訳作業の効率化のためにさまざまなデータ処理を行いますが、ここでは、代表的な例をご紹介いたします。
過去によく似た文書を翻訳したことがある、日本語版を一部改訂したため英語版もそれに応じて改訂したいが、どの文章を変更すればいいのか分からない、といった案件には、差分チェックを含めた翻訳フローを組みます。WordやPDFの比較機能を使用することもありますが、当社の専門の差分チェッカーが素早く正確に翻訳対象箇所を抽出します。
ソースデータが無い、あるいはPDFデータ以外に無い、図が画像で文字を変えられない、また、同じテキストが頻出する場合には、翻訳作業の前段階で、原文ファイルの翻訳対象箇所に番号を割り当てる番号処理を行います。同じテキストには同じ番号を割り当てるため、翻訳は1回分で済み、コストと時間を抑えます。また、納品ファイル上でのレイアウト作業が不要の場合にも、この番号処理を行うことで、DTPオペレーションを行わず、テキストのみでお納めすることで、コストを削減します。
Excelファイルなどの定型のフォーマットから翻訳対象箇所のみを抽出したい、Wordファイルの決まった箇所やテキストにだけ同じ処理を施したい、といったケースでは案件に応じてマクロや正規表現による一括処理を行います。単純な反復作業では、ヒューマンエラーの防止が重要になりますが、機械は正確で瞬間的に処理できるため、スピードと品質の両方をご提供することができます。
これらのように、当社では、原文内容を細かく確認した上で、お客様のご希望や翻訳物の用途に応じてデータ処理を翻訳作業の前後に行い、品質・スピード・コストのあらゆる面においてお客様のプロジェクトをサポートします。
翻訳には既製品というものは無く、すべての案件においてオーダーメイドのサービスが求められます。同じお客様からのお仕事でも、原文データの形式、翻訳の目的、対象となるエンドユーザー、ご希望の納期などによって制作フローは大きく変わります。前述のデータ処理を含め、対応翻訳者の人数、参考資料の有無、用語集の有無、専門翻訳者のスケジュール、翻訳支援ツール/各種QAツールの検討、クロスチェック・ネイティブチェック・編集工程の組み立て、お客様の校正スケジュールなど、制作工程を構成する要素は案件によって変わり、お客様のご希望の納期に応じて、最短でありながら最高のフローを確立しなければなりません。
当社では、経験豊富なセールススタッフ、プロジェクトマネージャーおよびコーディネーターが、必要事項をヒアリングした上で、各案件で最適なフローをご提案いたします。
また、当社ではセキュリティにも力を入れております。データのやり取りにおいては社内に設置した専用サーバーを用いており、メールによる納品の場合でも、第三者によるチェックおよび第四者によるパスワード送信を行う体制を敷いており、お客様の重要情報を最大限の注意を払って取り扱います。
近年、翻訳の制作現場において技術化が急速に進んでいる中で、原文データを取り扱うアプリケーション上での技術もさることながら、翻訳作業そのものにおいても技術を駆使した効率化が求められています。翻訳ソフトや機械翻訳は、まだ品質の面で人による翻訳に並ぶには長い年月が必要と言われているものの、翻訳メモリ(Translation Memory)や翻訳支援ツール(Computer Assisted Translation Tool)は今や業種を飛び越えて普及しています。その種類も、代表的なTradosやMemSourceのほか、Wordfast、Transit、memoQ、Deja Vu、OmegaTなど、さまざまな特徴を持ったツールが数多くの現場で使用されています。
翻訳支援ツールは、お客様の過去の翻訳情報、参考資料/用語集の対訳情報のデータベース化、繰り返しの多い文書の効率的な処理など、マニュアルや仕様書の更新時や、類似の文書の翻訳において効力を発揮します。翻訳品質の向上や納期短縮はもちろん、流用率の高いドキュメントほど翻訳コストが削減されるため、特に、大型案件、継続案件で非常に役立ちます。また、ツールを使用した翻訳データを将来の案件で翻訳資産として使用することも可能です。
当社では、お客様の指定の翻訳支援ツールがある場合は当然ながら、それ以外でも、原文の内容や形式等を考慮して翻訳支援ツールを使用したワークフローをご提案し、お客様にとってより良いソリューションを提供できるように努めております。
用語は、翻訳において非常に重要な要素です。文書内の専門用語は、原文でその意味が正しく理解され、翻訳版でも対象国の文化や業界特有の知識を踏まえて訳される必要があり、かつ、すべてのドキュメント内で統一されていなければなりません。そのため、用語集の保守管理と翻訳時の適切な対訳反映作業が必須です。
当社では、お客様の需要に応じて、用語集の整備および管理のお手伝いをいたします。過去のお客様の翻訳物からの用語抽出作業や、お客様が現在お使いの用語集との統合などを行うことで、業界用語や社内用語などを含めたお客様独自の用語集を作成します。また、お客様と当社間での用語集の共有を通じて、お客様がお使いの社内用語集が翻訳作業で適切に使用され、かつ用語の統一が図れます。また、複数名の作業者で用語集を共有していると、訳語の揺れや表記ルールの不徹底など、管理上の問題も数多く発生します。
当社では、MS ExcelやMS Accessを使用した最適な用語集管理を支援するほか、用語集向けの専門ソフトのご案内など、お客様のより良い用語集管理に向けたサポートを行っております。
当社では専用の業務管理システムにより、お客様からの引き合いから、見積り・受注管理、翻訳者・チェッカー等のリソース管理、工程・納品管理、売掛・買掛の管理などを一括して行っております。過去の案件や社内・社外のやり取り等も管理されているため、誰がいつどのお客様やどの案件に対応することになったとしても高い水準で均質にサービスを提供することが可能です。翻訳はオーダーメイドで作られることが多く属人的な要素がかなり含まれますが、そのプロセスにITをうまく組み入れることで属人性を最大限低くして、その上で人にしかできないケースバイケースのきめ細やかな対応を行う、という仕組みを作っております。
前述の業務管理システム上で、各案件の担当者を体系的に評価するシステムを導入しています。翻訳の品質管理は難しく、原文の状態、作業環境、翻訳付帯作業の有無、納期、料金などさまざまな条件があり、かつ主観的に判断すべき要素も多く含まれることから、当社では可能な限り多角的かつ複合的に案件担当者の評価を行うための仕組みやルールを敷いております。評価結果はリアルタイムで更新・閲覧され、各案件に適した担当者が客観的に導き出せるようにしており、品質の安定化や標準化を図っております。
当社が認証取得しているISO17100では、社内担当者および社外担当者の資格や力量、かつ各案件で定められた要件に従って工程が組まれ実行されたかなどが厳しくチェックされます。当社では外部審査だけでなく、社内においてもISO17100の要件に沿って内部監査を行い、適切な人員が適切な工程に沿って案件が進められたかを細かく確認し、不備や漏れ等があれば担当者に確認を行い、適宜是正措置等を講じます。また、関連マニュアルの更新も適宜行っております。
※当社で認証取得しているISO17100の翻訳区分は「C 工業・科学技術」の日英・英日です。また、すべての案件がISO17100の要求事項を満たすわけではありません。ISO17100に準拠した工程でのサービス提供をご希望の際には、担当者にお申し付けください。
ISO17100についてはこちら
お客様からのお褒めの言葉やお叱りの言葉は、当社が品質を維持向上するために何よりも重視し、かつ参考にするものです。当社ではお客様からのフィードバックを業務管理システム上で管理し、それを実案件やお客様の登録情報と紐づけて運用することで、お客様の声を次回案件や当社の品質管理体制に最大限反映するように取り組んでおります。具体的には、案件担当者へのフィードバックや次回案件への申し送り、お客様ごとの案件の性質や注意点といった登録情報の更新、社内関係者への情報共有や注意事項・ヒヤリハット事項の周知徹底、当社の基本的な品質管理体制の見直しの検討、対策の効果測定や振り返りチェックなどといったことに日々役立てております。
実案件での経験が品質の維持向上に役立つことは言うまでもありませんが、翻訳はIT化が速いスピードで進んでいることや、お客様が求めるものが急激に変化すること、社会情勢や経済状況の影響を受けやすい仕事であることを考慮して、技術・情報格差是正や技術力・制作対応力底上げのための社内研修や、新しい知見や技術を習得するための外部での各種セミナー受講など、従業員の教育に力を入れております。社内や社外で得た情報や技術をすぐに実案件に反映できるように、職場のITインフラ整備や土壌・雰囲気の形成にも注力し、従業員の前向きでのびのびとした成長意欲の促進を行っております。
これまでに述べてきたとおり、ハードとソフトのあらゆる面において品質の維持向上のための取り組みを行っておりますが、やはり仕事は人の力で動くものだと当社は認識しています。また、従業員の個性を生かしながら同時に組織としての標準化や脱属人化を両輪で図ることの重要性も理解しており、当社ではそれを実現するために旧来の考えややり方にとらわれない、フレキシブルなマインドを持つことを常日頃から心掛けています。加えて多角的に多様的に仕事に臨み物事を見ることで、お客様にとって最適な「その手があったか!」というサービスを提案できるものと考えております。