「世界文学の時代がやってきたのだから、この時代を前進させるために皆が尽力せねばならない」
国民文学から世界文学への流れを提唱したゲーテの名言だ。
『世界文学とは何か?』の著者デイヴィッド・ダムロッシュは、「世界文学」とは無限に広がるつかみどころのないものではなく、時代によって、または読み手によって流動的に変化する、まさに故きを温ねて新しきを知ることができるものだと表現している。
しかし、ゲーテが提唱した通り世界文学は広がっていったが、経済的に繁栄している国の言語に偏って出版されていることは否めない。
世界文学の広がりに翻訳は不可欠だ。より多様な言語への対応が望まれる中、世界の政治や文化の境界線をまたいで創作する翻訳者たちは、かつてはその仕事を単なる補足作業と言われたこともあったが、今や芸術としてみなされてきている。