同時通訳が脳のどのような働きによってなされるかという研究は、長年解明が難しく神経科学者にとって大きな課題となっていたが、最近、脳内の複数の領域がネットワークを構成することによってもたらされることが明らかになった。
今回の発見は、意思決定や信用のプロセスを司ることで知られる「尾状核」という脳の領域に神経科学者が着目したことによるものだが、この尾状核は言語を専門的に司る領域ではなく、脳内の多くの領域を駆使し、活動を調整し、驚くほど複雑な行動を引き出す、まるでオーケストラの指揮者のような役割を果たす。これは、過去10〜20年間にわたる神経科学の研究によって明らかになった考え方とも結びついており、我々の最も高度な能力の多くは、特定のタスクに特化した専門領域によって行われるのではなく、動作や聴覚のような、一般的なタスクを担う領域間で遂行される超高速の調整によって達成されるということだ。